空と朝日

   見えない方々のためのガイドヘルプをされている女性から聞いた話です。

 先月、東京に住む彼女の息子さん夫婦に子どもさんが生まれました。女の子と男の子の、双子の赤ちゃんだったそうです。でもその子たちは、今生の世を見ることなく、他界されました。死産だったのです。病院は慈愛に満ちた対応をしてくださり、可愛らしい産着でその子たちを包んでくれました。

 お父さんとお母さんは、その子たちの葬儀の席でも笑顔さえ見せて、気丈に振舞っていたそうです。二人はその子たちに名前を付けました。女の子は「空」、男の子は「朝日」という名前です。これからずっと、毎朝起きて窓を開けるたびに、その子たちに思いを馳せるようにと名付けた名前でした。悲しみの感情が毎朝去来することも厭わずに、若いご夫妻が「空」と「朝日」という名前を付けられたことに、胸を打たれます。

 

「悲しみの種が心に蒔かれ、慈悲の実を結ぶ」。そんな言葉が心に浮かびます。悲しみ体験は、それを抱きしめるように大切に育てると、苦しみ悲しむ人を癒す人格をもたらすことでしょう。