懐かしい未来

「懐かしい未来」。この郷愁とロマンを融合させたこの言葉は、スウェーデンの言語学者で環境活動家のヘレナ・ノーバーグ・ホッジ氏によるもので、カシミールの秘境ラダックに入り込み、そこでの活動を通して、21世紀の在り方を表現したものでした。ラダックにおける彼女の活動はさておき、藻谷浩介氏がその著書「里山資本主義」の中で、グローバル経済に捕らわれない様々な地域の活動を紹介しましたが、実はそれらの活動は、かつて日本が持っていた共生の価値観や伝統文化に現代的な叡智を加えたものであることを見抜き、ヘレナ氏のこの言葉を紹介されていました。

 

 さてそれでは、在りし日の日本はどのような国だったのでしょうか。

幕末に長崎海軍伝習所で2年間教育隊長を務めたオランダ人カッテンディーケ(帰国後海軍大臣・外務大臣)は、次のような言葉を残しています。「私は心の中で、どうか今一度ここに来て、この美しい国を見る幸運に巡り合いたいものだと心密かに希った。しかし同時に私はまた、日本はこれまで実に幸福に恵まれていたが、今後はどれだけ多くの災難に出会うかと思えば、恐ろしさに堪えなかったゆえに、心も自然に暗くなった」。江戸時代260余年の長きに渡り、平和で美しい文化を築いてきた日本に、マネー資本主義を持ち込む側の西洋人が心密かに抱いていた懸念は、その想像を遥かに超える破壊力を持って現実のものとなっていきました。

 

これからのブログでは、かつて日本人が持っていた伝統的な知恵や感覚の断片を、この先の未来のために掘り起こしてみたいと思います。