懐かしい未来「日本人の塩」①

つい先日、治療院のお客様で看護師をされている方から「自然治癒力を引き出す塩の真実を伝えたい」という小冊子を頂いた。著者は財団法人「健康回復学研究所」の所長工藤清敏さんで、その中に興味深い一節があったので、要約して紹介したい。

 

「昔ながらの海水を引き入れた天日・釜炊きで作られた塩には、豊富な微量ミネラルが含まれている。ミネラルは結晶化する時間がそれぞれ違っていて、最後に結晶化するのがマグネシウムで、これが「にがり」の主成分だ。面白いことに、日本の伝統的な塩作りでは、このマグネシウムの8~9割を「にがり」として豆腐作りに活用し、残りの1~2割は塩に残した。そのことによって、日本人が食する塩は、人間の血液の成分に中にあるマグネシウム量とほぼ一致することが現在知られているのだ。だから古代の日本人は、直感的に人間に合うミネラル量をしっかり調整していた訳である。人間が手作りする伝統海塩こそ、身体の老廃物を解毒し、免疫システムを高めるもので、身体の自然治癒力には欠かせないものなのである。」

 

 

紹介してくださった看護師さんは、可愛らしい小瓶に自然塩を入れて持ち歩き、普段から小まめに塩を取り、体調不良の時は多めに取って休み、肌にも化粧水代わりに塩水を使うのだそうで、ご自身も健康そうで、肌もとても綺麗だ。

そう言えば、日本で最も古い海水浴場は、明治初期に開かれた大磯海岸(現神奈川県。初代陸軍軍医総監の松本順氏による開設)なのだが、当時は海水浴場とは呼ばず、「塩湯治場」と呼んだそうだ。海で疲れを癒し、健康を増進することが目的だったのだ。漢方的素養がまだ色濃く残っていたこの時代には、そうしたある種の自然療法を素直に受け入れる下地が、日本人の中にも残っていたのだろう。人間の生命にかかわる大切な塩について、もっと目を向けてみたい気になった。(写真は大磯海岸)