見えない世界に思うこと「皮膚感覚の不思議」④

文字通り「皮膚感覚の不思議」という本がある。著者は、桜美林大学心理・教育学系教授の山口創氏。そこには、こんな一節がある。

 

「他人と接するとき、皮膚は何らかのメッセージを発しているはずである。もちろん、相手に直接触れれば、その感覚は即座にわかる。しかしたとえ触れなくても、相手の心理的縄張空間(半径約1m以内の距離)に入って、相手の持つ「気」を感じてみると分かるだろう。(中略)いろいろな場面で、皮膚に意識を向けていると、徐々に皮膚が発しているサインを読み取ることができるようになるだろう。自分の対人関係のパターンに気付き、またそれを積極的に変えていくためにも、皮膚のアンテナを磨く必要があるだろう。」

 

 人間の身体も、光を発していることが明らかになっている。生体光子(バイオフォトン)だ。光も波であり粒子であるわけだが、光波を放つホタルなどとは違って、光っては見えない人間の身体も粒子としての光を発している。人間から発せられるものは皮膚からだけではない。心臓から発せられる磁気エネルギーは、トーラス状に半径1.5m~2.5mまで広がっていると言われている。そしてこれらは、量にも質にも個人差があり、刻々と変化しているわけだから、人を理解するための貴重なサインであり、情報になり得るだろう。

 

 このように考えると、実は私たち人間は歩く受信機であり送信機であり、気が付かないうちにあらゆる種類の信号を出したり受け取ったりしていると言えないだろうか。山口氏によれば、そのアンテナの精度、つまり皮膚感覚の精度は、意識的に磨けば高めることができるという。そうなれば、私達人間はもっと自分の思いや内面に、責任を持てるようになるだろう。例えば、平和的な思考を持てば、平和的な発信源となり、平和的な思考の集合体を作り、平和的な空間を作っていく、というふうに。人々を誘導する巧みな話術も、視覚情報のトリックも、意味をなさない世界だ。

 ひょっとすると、1万年以上平和が続いた縄文時代というのは、そのような世界だったのではないか、と思ったりもする。視覚偏重の生活様式を顧み、見えない世界に思いを向けるのは、そんな意味でも面白い。

 

 

トーラス状:トーラスは円周を回転して得られる回転面